しさくさんさく

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今回は少し前のアニメの解説です。


UNGOは少し前まで放送されていたアニメで、坂口安吾の探偵小説にモチーフをとったオリジナルの探偵ストーリー。

舞台は戦争の爪痕残る近未来の日本。
物語の中心となるのは主人公の名探偵「結城新十郎」と、そのバディである不思議な力を持ったショタっ子「因果」。

原作ではこれに加えヘタレ探偵が出てくるのだけど、そこは改変されていて「海勝 麟六」という、戦後復興に貢献した国士的企業家兼名探偵のライバルが出てくる。

さらには隠れた敵?としてある宗派の現人神を称する少女「別天王」なる人物も存在します。


さて、最終回はこの海勝の命を狙う犯人を新十郎が追うという内容になっています。
この話の中で何がどう風刺されてるのか、説明するにはまず、この事件の背景と犯人について言及しなくてはいけません。



【事件の背景】

海勝は先にも書いたように、名探偵でありながら同時に戦後復興に貢献した国内有数の通信関連企業の社長でもあります。
彼は事件の起こる少し前から、自然エネルギーを利用した発電事業へと新規参入する計画を進めていました。
しかしながらこれを良く思わなかったのが、過激派の「フルサークル」というハッカー集団。
彼らはもともと海勝のことを快く思っていなかったこと、また国有化が進められていたある自然エネルギー事業に関する利権を海勝が狙っているのではないかと憂慮し、蜜月関係にあった女性議員を通じ海勝を陥れる画策をします。

そして最終回では起こった一連の事件の首謀者が、この「フルサークル」とその繋がりのあった議員、さらには個人的な利害の一致から手を貸した警察庁課長によるものであることが明かされます。







さて、この時点で勘の良い人であれば、これが何を風刺しているのかわかると思いますが、実はこれ震災後の日本とそこで話題に登った存命中のある著名人を風刺しているんですね。

まず「戦後の爪痕残る日本」は、そのまま「震災の爪痕残る日本」。
そして「海勝」は、何を隠そうソフトバンク社長「孫正義」氏をモチーフとしているわけです。

しかしながら実はもう一人、この話の中で風刺されている人物がいます。

それは石原慎太郎知事です。
作中、彼に当たるキャラは「フルサークル」と蜜月関係にあった女性議員。
彼女は最終回の途中、演説のシーンで次のようなセリフをいいます。

「そう、我欲です!太陽光発電が国有化されれば ~(中略)~ でも(海勝は)お亡くなりになってしまった。これは天罰でしょうか!?」


この「我欲」と「天罰」というワード。さらにこの「フルサークル」と議員の政治スタンスというのはどちらかと言うと右寄り、つまりは憂国系の主張をする人達なわけです。

一方、石原氏もきっての右派政治家として知られています。
またご存知の人も多いかと思いますが、石原氏は震災直後次のような騒動を起こしています。



石原知事「津波は天罰、我欲を洗い落とす必要」(読売より)

"石原知事は同日午後、都内で「震災に対する日本国民の対応をどう見るか」と報道陣に問われ、「スーパーになだれ込んで強奪するとかそういうバカな現象は、日本人に限って起こらない」などとした。さらに親が亡くなったことを長年隠し年金を不正受給していた高齢者所在不明問題に言及し、「日本人のアイデンティティーは我欲になった。政治もポピュリズムでやっている。津波をうまく利用してだね、我欲を1回洗い落とす必要があるね。積年たまった日本人の心のアカをね。これはやっぱり天罰だと思う」と語り、「被災者の方々はかわいそうですよ」と続けた。"


この発言、正確に言えば「津波は天罰だ」という意味で言ったわけではないのですが、まぁそれは一度置いておくとします。
石原氏はこの騒動を受けて一度謝罪をしていますが、その後次のような本を出しています。


石原慎太郎『新・堕落論―我欲と天罰―』|新潮社




いろいろ瞬発的なツッコミは置いておいてw
この本の冒頭で石原氏は坂口安吾の「堕落論」を引用し、そこから現代人を賛辞麗句に惑わされ本質を見失った堕落した存在であると論じています。
つまり「天罰発言」は正確に言うと、「自戒のための良い契機だと思え」という(震災時というよりは普段の大衆への)喝破だったわけですが、結局のところ言い方が悪いというか、言葉を選べばよかったのにねという。

この著書では冒頭以降もそのような、所謂ところの俗流現代論・憂国説を様々な観点から綴っているわけです。





話を「UNGO」に戻しましょう。
しかしながら「UNGO」の中では海勝が、このような一部の右派の振りかざす俗流憂国論を「正しく現状を見ていない間違ったものである」と一刀両断しているんですね。

つまりここで石原氏が「堕落論」から政治における「言葉(象徴)の欺瞞」を指摘したのと同様に、UNGOもまた同じ文脈から石原氏のような俗流憂国論を「言葉の欺瞞」であると断じたわけですね。
直接的な題材こそ違えど、都条例の際に同じようなロジックで悪者扱いされた、アニメ・漫画が同じ土俵で真正面から石原氏的な思考を批判したわけですから、これにはある種の感慨深さもあります。


またその一方で海勝もまた新十郎から、「口当たりの良い言葉や理想論を振りかざすなど表面を取り繕いながら、目的のために裏で汚いことを行なっていることもおかしいのではないか」と迫られます。
(実際に孫正義氏が汚いことやってるかはなんとも言えないところですけども)


このようにUNGOは最終回で割とビックな人物を2人相手にして暗に風刺、批判してたわけです。
なかなか思い切ったことをしますね。



ちなみに震災や安吾が与えた作品への影響については脚本家の會川氏がインタビューの中でも語っております。(安吾作品の解釈が微妙に間違ってるんじゃないかとかいうのはスルーで)

人は必ずブレるもの 「UN-GO」脚本・會川昇氏が語る【前編】



人は必ずブレるもの 「UN-GO」脚本・會川昇氏が語る【後編】





まぁそんなUNGOなわけですが、ミステリーの部分は基本的に作品のアクセントみたいになっているので、本気でミステリーを期待してる人には向かないかもしれません。
ショタやロリが好きなら因果や風守が可愛いんでオススメですよ。
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